新神戸駅からわずか0.4キロメートルの位置にある名勝「布引の滝」。今回は「布引ダム」を経て「布引の滝」へと向かうコースを散策しました。
布引ダムからは、下りの山行になるのでぬれた落ち葉で滑らないように注意して歩きます。
しばらくすると、大正初期に造られた鉄筋コンクリート製の橋「谷川橋」があらわれます。この橋桁の鉄筋は、折り曲げるなどの工夫が施されており、布引ダム同様、重要文化財です。明治大正期の土木建築技術の高さがうかがえます。
遊歩道脇に咲いている小さな花が目にとまりました。「ヤクシソウ(薬師草)」でしょうか。鮮やかな黄色です。「葉が薬師如来の光背に似ている」「薬草として使われていた」など名前の由来はさまざまな説があるようです。
小さな丸い葉に覆われた木がありました。木を覆っているのは「マメヅタ(豆蔦)」です。マメヅタは樹皮や岩盤などに根を張って生きる着生植物、胞子で増えるシダの仲間です。テラリウムで使われることもあり、岩に付いた状態でネット販売されているのを見たことがあります。
小さな植物ですが群生すると迫力がありますね。
道標にしたがって歩き続けると、布引の滝を見下ろす位置にある「おんたき茶屋」があらわれます。大正4年創業の老舗茶屋で、おでんやラーメンの他、ビールやアイスクリームなど幅広いメニューを揃えています。布引の滝をモチーフにした茶屋オリジナルのTシャツや手ぬぐいも購入できるようです。
絶景を肴にビールを飲みたかったのですが、小雨が降ってきたので先を急ぎます。
布引の滝はおんたき茶屋の下にあるので、店内を通り抜けて石畳の階段を降ります。
「布引の滝」に到着。布引の滝は、4つの滝「雄滝、夫婦滝、鼓ヶ滝、雌滝」の総称です。写真は、高さ43メートル、深さ6.6メートル、滝壺面積430平方メートルの雄滝。
滝の細さにちょっと驚きました。この雄滝は本来、もっと水量が多く太い滝です。布引ダムを訪れた際、水位の下がり具合が気になったのですが、これが影響しているのかもしれません。
ちなみに、雄滝には龍宮城の乙姫が住んでいて、乙姫が着ている白い布がさらされて滝が白く見えるという言い伝えがあります。
白布というよりは白糸のような流れの雄滝でしたが、それはそれで趣があります。
山を下りながら鼓ヶ滝、雌滝などを横目でさらりと鑑賞。前回の記事でご紹介した砂子橋をわたり、新幹線の高架下を抜けるとそこは高層ビルが建ち並ぶ新神戸駅前です。
高架をくぐり抜けるだけで風景ががらりと変わるので、不思議な気分になるのですが、これも市街地に隣接した六甲山の魅力のひとつかもしれません。
(2021年11月撮影 機材:CANON EOS RP)