拙宅がある地域には、水鳥が集まる公園があります。ビルの谷間のオアシスのような公園には、ドングリがたくさん実る木に囲まれた池があり、秋になると数十羽のカルガモが飛来。水鳥が隊列を組むようにして泳ぐ姿は冬の風物詩となっています。
さて2020年の冬、公園の池で一羽のオシドリがカルガモたちと一緒に泳いでいました。つがいではなくオス一羽だけだったので何らかのトラブルにあって、元いた群れからはぐれたのかもしれません。気になったので散歩がてら様子を観察するようにしていました。
サントリーの情報サイト「日本の鳥百科」によると、オシドリはオシドリだけの群れをつくるそうで、他のカモとはなじまないのだとか。でも、このオシドリはカルガモと一緒に泳いだり、水辺に生えた草の実をつついたりしていたので、それなりになじんでいたようです。
余談ですが同サイトには、小林一茶がオシドリを詠んだ句が紹介されていました。
「放れ鴛(おし) ひとすねすねて 眠りけり」
この句の意味は「つがいのいないオシドリがすねて眠った」で、晩婚の一茶が自身をオシドリに重ねて詠んだそう。たしかに、華やかなオシドリがポツンと一羽だけでいる姿からは、何やら一抹の寂しさのような感情が伝わってきますね。
季節が変わり公園の桜が見頃になった頃、はぐれオシドリはいなくなりました。野生の生き物はたくましいので、どこか別の場所で、新しい群れになじんで生き抜いているのでしょう。
それではまた。
(2020年、2021年撮影 機材:Canon EOS M6)