白魚、鮎、茄、軍鶏・・・四季折々の食材に纏わるあれこれを綴った
池波正太郎のエッセイ集「剣客商売 包丁ごよみ」を読みました。
エッセイがおもしろいのはもちろんですが、
剣客商売シリーズで老剣客・小兵衛が舌鼓を打った江戸の味を、
料理人・近藤文夫さんが再現しており、写真つきのレシピとして
紹介されているのが便利で良い。
この本があれば剣客商売に登場する料理を自分で作れそうです。
ところで本書に、赤穂浪士の大石内蔵助が討ち入り前に
鴨料理を食べたエピソードが紹介されていました。
大石内蔵助と主税の親子は討ち入り前、
堀部弥兵衛の浪宅で、身支度を整えて食事をしたそうです。
食べたのは、鴨の肉を炒って小さく切り、
味をつけた生卵と混ぜ合わせ、
炊きたてご飯にかけたというシンプルな料理。
夜食としてはカロリーが高そうですが、まあ討ち入り前ですしね。
この料理、呼び名がなかったので仮に「鴨肉の卵和えスタミナ丼」としておきます。
大石内蔵助はこの丼を食べて「旨い、弥兵衛殿の御内儀は、気がきいたものを出してくれた」と喜んだそうです。
ちなみに鴨肉は、不飽和脂肪酸やビタミンB2が豊富な疲労回復効果もある食材。特にビタミンB2は鶏肉の4倍、鉄分は鶏肉の6倍も含まれているそうですよ。
堀部家が大石に出した料理は、この鴨肉にさらに卵でパンチを効かせて栄養価を高めてあるわけですから、討ち入り前の「勝負メシ」にぴったりですね。
討ち入りが成功したのは、もしかすると堀部家特製「鴨肉の卵和えスタミナ丼」のおかげかもしれないと思いました。
■参考資料:剣客商売「包丁ごよみ」 著者:池波正太郎 発行所:新潮社
(2022年12月撮影 機材:CANON EOS RP)