「旧ハッサム住宅」が建造されたのは明治35年。当時はインド系イギリス人貿易商K・ハッサムの自邸として使われていました。
北野異人館街(現ラインの館の北側)に建てられたのですが、昭和36年に神戸市が寄贈を受けた後、昭和38年に相楽園の中へと移築。木造2階建て、寄棟造桟瓦葺。屋根にレンガ造りの煙突が2本、外壁の下見板張りオイルペイント塗り、張出窓などの特徴を今に伝えています。
ベランダの1階の柱はアーケード式(アーチを連ねた形)、2階はコロネード式(列柱式)というこだわりの仕様。ちなみに、2階の柱の頭の部分に、アカンサスの葉の飾りが施されています。
左右に部屋がある中央廊下形式の間取りを採用。玄関を入って中央部に階段を含む小ホールと廊下があります。1階は接客スペース(応接室、居間、食堂など)で、2階はプライベート空間(寝室、子供部屋、浴室など)となっていました。
内部が公開されていたので入らせていただきました。
写真撮影もOKでしたので少し撮らせていただくことに。
1階の応接室は南向きの窓から光がたっぷり差し込む明るい部屋。
絨毯や椅子も豪華な印象で、会話がはずみそうな空間ですね。
2階へと続く階段。天井にも葉飾りが施されています。
2階、南西の部屋。旧ハッサム住宅は朝ドラ「べっぴんさん」のロケ地。マクレガー夫妻が住む洋館という設定でこの部屋が撮影に使われたようです。花柄のカーテンが乙女っぽい可愛らしさですが、床や窓枠の色に合っているので、違和感なく部屋になじんでいます。
カウチソファも素敵ですね。
風呂場は北向きですので、窓から入る光が柔らかい。湯船も程よい大きさでした。2階にあるので、風通しも良さそう。特にこの飴色のレトロ感あふれる湯沸かし器に興味が湧いたのですが、解説パネルがなかったので、設置年やメーカー、型式などは不明です。
ほぼすべての部屋に暖炉が設置されていました。イギリス人は、暖炉のそばで読書をするのが好きと聞いたことがあるのですが、ハッサムさんも、暖炉の前で読書を楽しんでいたのでしょうか。
火は寒さを和らげるだけでなく、心を落ち着かせてくれる効果もあります。神戸の冬はイギリスに比べて暖かいと思うのですが、やはり暖炉の設置は欠かせなかったのでしょう。
(2022年11月撮影 機材:CANON EOS M6、CANON EOS RP)