映画・ドラマのロケ地として
明治から昭和初期にかけて外国人が移り住み、多くの異人館が建てられた塩屋の街。
明治41年頃に建設された「旧グッゲンハイム邸」は、その時代の記憶が刻まれた重要な建築物の一つです。
現在は異人館の保存・維持のため、多目的スペースとして、また「繕い裁つ人(2014年)」「スパイの妻(2019年)」など、映画・ドラマの撮影地としても活用。
毎月第3木曜日に開催される無料見学会では、誰でも館内を自由に歩くことができます。
1階西側の部屋に置かれたピアノ。
まるで街角ピアノのようにさらりと自然に演奏が始まったので耳を傾けました。
聞き覚えのあるメロディー…たぶんトロイメライ。
テーブルの上にさり気なく並ぶレアな雑貨。
版画が味わい深い「しおやカルタ」も販売。
ちなみに「ね」は「ねむりからさめてにぎわうグッゲンハイム」。
歩くたびにギシギシと音が鳴る床。
傷一つ一つが、まるでこの洋館の歴史を語っているかのようです。
2階へ。
これは!素敵なベランダですねー。
窓から見えるのは交通量多めの国道と塩屋の海。
海に沿ってJRと山陽電車の駅が並ぶ塩屋は
交通手段の充実度が高い街ですね。
このベランダから、電車、車、船が行き交う様子を1日中堪能できるので、
乗り物愛好家におすすめしたら喜ばれるスポットかもしれません。
よく見ると窓の左端に神戸空港へと向かう飛行機も小さく写り込んでいました。
ベランダの西側から山陽電車の往来を眺めることができます。
ビル越しですが明石海峡大橋も望めます。
ポートアイランドにある「みなと異人館」、相楽園にある「旧ハッサム住宅」同様、
「旧グッゲンハイム邸」もコロニアルスタイルの異人館。
窓が大きく開放的だから明るい雰囲気で、
風がスーと室内を通り抜ける感覚がとても気持ち良い。
今回も、ついつい予定より長く建物内で過ごしてしまいました。
実はライオンス邸だった
長年「旧グッゲンハイム邸」と呼ばれてきたこの洋館。ところが2020年になって、この家を所有していたのはジェイコブ・ライオンス氏という人物だったことが土地台帳で確認されたそう。
ドイツ系アメリカ人貿易商グッゲンハイムさんとそのご家族が住んでいたのは、この洋館の北隣にある別の家。この取り違えは1960年代に起きたそうです。
ですから、この異人館の正しい呼び名は「旧ライオンス邸」。でもまあ長年「貿易商のグッゲンハイムさんが住んでいた洋館」として親しまれてきたのに、今さらライオンス邸に改名するのも如何なものかということで、今でも「旧グッゲンハイム邸」と呼ばれてるみたい。
私見ですが、ドイツ菓子の商品名のような「グッゲンハイム」という響きは、この異人館のムードにピッタリだと思います。ライオンスさんには悪いですが、やはりこれからも「旧グッゲンハイム邸」と呼び続けるのが良いのかもしれません。